天を見上げて

 献血をする人が減っているそうです。災害などの被災地でボランティアをするのとは違って、献血をしても直接感謝してもらえるわけではないから、献血はコストパフォーマンスが悪いのだそうです。『世界は贈与でできている』(近内悠太著・ニューズピックス・2020年)に、そのようなことが書いてあって、「『感謝というレスポンス』が直ちに返ってこないと贈与ができないというのは、もはや贈与ではありません。それは、贈与に見せかけた『交換』でしかありません。」と指摘してありました。

 確かに、感謝されると嬉しいし、そしていつの間にか、人からの評価を気にしながら、生きてしまいがちです。それが人間というものかもしれません。でも、そういう呪縛から自由になりたいものです。

 東日本の震災の時は秋田にいました。西日本の豪雨の時は岡山にいました。わりと身近なところに被災地がありましたが、引越しで疲れているし・・・まだ、新しい地に慣れていないし・・・と、ボランティアに行きませんでした。そのことにずっと後ろめたい気持ちを抱えていました。でも、献血というボランティアもあると、気付かされ、みんながやっていることでも、できなかったら仕方ないし、自分にできることをやったらいいんだと、すごく気持ちが楽になりました。

 認知症の義父母と接していると、やはりストレスが溜まります。感謝されることはまずありません。それどころか畑に除草剤を撒かれたりします。・・・わからずにやっているから、腹を立てても仕方がないと思っても、なかなか苦しいですよね。家族だから故の難しさもあります。

 適度な距離を保ちながら、「天は見ている」と、思うことで、心の健康を保っていくことが必要です。

 新しい場所に畑を借りて、楽しんでいます。初めての400cc献血にも挑戦しました。小柄で元々血圧の低い私には、かなり心臓がバクバクする体験でしたが、どこかで私の血が役に立っていると思うと、嬉しいですね。