みんなで作ろう布マスク

 布で作る手作りマスクの作り方を発見したとき、これを作って売ったら、儲かるかもと、不謹慎にも思ってしまいました。「100個も200個も注文が来たら大変だよ」と言われて、やっぱりやめておこうと思いました。

 10個や20個なら楽しく作れても、それ以上はやはり苦痛です。むしろ、まずは自分と家族や周囲の人のために作るのが良さそうです。美作市ではみんなで作ったマスクを、介護施設に届けたとニュースにありました。素敵ですね。

 ただ、この報道に接したときに、介護施設の利用者さんの中にも、マスクを作れる人はいるのではないだろうかと、思いました。お世話する人とお世話される人に分けてしまうことが、実は、利用者さんたちの活力を奪ってしまい、かえって依存状態を作っているような気がするのです。

 「ひきこもり町おこしに発つ」という本があります。秋田県藤里町で、引きこもりだった人たちが、高齢者の買い物を手伝ったり、そばやマイタケキッシュを提供するレストランで働いたりして、町おこしに一役買っている取り組みが紹介されています。

 一人一人が、できる範囲で助け合うことができれば、子どもたちや老人も含めて、各自がそれぞれの役割を果たせ、みんながもっと幸せになるのではないでしょうか?そして、助け合える人間関係が築けるなら、経済が行き詰まっても、生き延びていけるような気がします。食べるものと着るものをみんなで助け合いながら調達できれば、とりあえず生きていけるはずなのですから。

 ところが、今の経済のしくみでは、労働は賃金と引き替えにするものとなってしまっています。そして、少しでももうけようと考えるのが人間の性です。そこから不幸が生じています。

 たとえば、地方都市の工場が製造して納品した下着が、東京では、納品価格の10倍の値段で売られているそうです。納品単価が安いため、工場では最低賃金しか労働者に支払うことができないので、地方の若者は大都市に出てしまい、外国人労働者に頼っている現状があります。

 仮に布マスクがはやるようになっても、今の経済のやり方では、地方の人は安い賃金で単調な仕事に従事し、都会の人は高い値段で製品を買い、潤うのは、資本家だけとなってしまいます。

 各自が自分と周囲の必要を満たすために作ることをすれば、誰もマスクに高いお金をかける必要もなく、みんなが必要なものを手にできます。とても単純なことなのです。

 マスクから初めて、徐々に、自分で作るものを増やしていけば、それだけ自由になり、幸せと安心を手にできます。

 わたし自身もつい、布マスクを作って売ったら儲かるかもと、考えてしまいましたが、儲けようという思いを持つことで、不幸の原因を作ってしまいます。儲けようという思いを手放して、助け合う道を探った方が良さそうです。